「自己効力感」というあまり聞き慣れない言葉。実は、子どもの学習意欲や成績に深く関わっているようです。「自己肯定感」という言葉はもう耳が痛くなるくらい聞いたという方も多いでしょう。どちらも同じくらい子どもの成長にとっては大切なものですが、「自己効力感」は、まだまだ馴染みのない言葉ではないでしょうか?今回の記事で、2つの違いをしっかりと認識し、なぜ「自己効力感」が大切なのか?理解をしていただけたら幸いです。
自己肯定感と自己効力感の違いは?
自己肯定感とは、「ありのままのじぶんを肯定する」ことです。長所や短所全て含めて自分自身である事を認め、どんな自分にもO Kと言えることです。自分が何かできるからという理由ではなく存在自体に価値があると認識する感覚であり、自己肯定感が高いとできないことや苦手なことがあっても落ち込んだり自分を責めたりすることはなく、前向きに考えることができるとわれています。
自己効力感とは、「じぶんの能力や成功を信じることのできる」ことです。自己効力感が高い子は「自分はこの問題を解決できる」「自分ならやればできる」など自分に自信をもっているので、色々なことに積極的にチャレンジします。また例え失敗したとしても、すぐに立ち直り、諦めずに行動をすることができると言われています。逆にこれが低い子はじぶんに自信がないので「自分にはできない」「きっと失敗する」という思いが強く何かにチャレンジすることを避ける傾向があり、また失敗する事でさらに自信を無くしてしまいます。
このように比べると「ある目標に向かって自分からすすんで行動をする」ことに直接影響を与えるのは自己効力感であることが分かります。但し、この2つの関係性は強く、自己肯定感が高い(自分の存在には価値がある。自分を大切に感じている)という前提があってこそ自己効力感をより高めていくことができるのです。
教育心理学の先行研究によると、自己効力感が高いと学習の面で自分を客観的に見て学習方法を工夫したり、学習の動機づけをすることができるようです。実際、小学生の一日の学習時間や学習の質が自己効力感の高さと関係があるという結果を2015年にベネッセ教育総合研究所が報告をしています。
自己効力感を高めてあげるためにできること
まず、自己効力感がどのような経験や体験を通して変動するのか見ていきましょう。
- 行為的情報→課題を遂行し成功することで自己効力は高まり失敗することで下がる
- 代理的情報→他者の課題の遂行を観察することによって「自分にも出来そうだ/無理だ」と感じる事で自己効力は変動する
- 言語的説得の情報→他者からの言葉による説得や自己暗示が影響する
- 情動的喚起の情報→ストレスが少なく肯定的な気持ちになれる環境で自己効力は安定する
上記に挙げた4つを連動しながら変動し、より安定した自己効力感へと成長していくのが理想的です。
それでは、親である私たちはどのようなアプローチで子どもの自己効力感を高めてあげることができるでしょうか?
とにかく成功体験を増やしてあげる
成功体験が少なく自信のないお子様にはとにかく小さなことでたくさん「出来た!」と実感できる機会を作ってあげましょう。今のじぶんにとって少しむずかしいというくらいの課題がベストです。パズル、ドリル、…お子様の好きな事や興味がある事でOKです。また「出来た!」だけではなく、人から「ありがとう!」「助かったよ!」と言ってもらえる事も成功体験です。お手伝いをお願いすることも良いのでは?
失敗を責めない
間違いや失敗、できなかったことにどう対応するかも非常に大切です。「なんでできないの?」「何回言ったらわかるの?」と子どもを責めるよりは、間違った時はどうしたら正しくできるか一緒に考えたり、失敗した時は「大丈夫。次がある。」と前向きに考えれるような言葉かけを工夫しましょう。できなかった時もどうしたらできるか?一緒に考えてあげる事で、子どもは失敗したり、できなかったらそれでおしまいではなく、次に繋がるんだということがイメージしてできるようになります。きっともう1回やってみたいと考えるようになるでしょう。
自己肯定感を高めてあげる
安心した環境でこそ子どもの自己効力感が安定して高くなります。子どもが何かできるからではなく、ありのままの状態を受けいれてあげる言葉かけや接し方を意識しましょう。この部分はまた別の記事で詳しく書きたいと思います。
最後に
自己効力感が高い子どもは「親に頼らず自分で決めることが多い」「人より優れたところがある」と認識している傾向があります。子どもを信じてなるべく自分のことは自分で決める、得意なことや好きなことがあれば伸ばしてあげる手助けをすることも、親として大切なことではないでしょうか?
中学生や高校生になったときに自主的に勉強ができる力を身につけるために、子どもの自己効力感を意識していきたいですね。